勝ち組と負け組

 何とか勝ち組だわ、と彼女はいう。

 今日は朝から講義。90分をフルに使い切るほど、伝えるべき情報が多い授業だった。受講生のモラールが高いので、朝から力が入る。入れられる方はたまったもんじゃない?

 その後は夕方まで自分の研究を進める。データを扱うのは大変面白いことだわ。
 もっとも、朝から元気に活動しているせいで、午後になると眠たくなってきた。
 ちょうど良い具合に、その頃には大学を出て難波に出向く用事があったのである。気合いがかけたときに、違う作業に移るというのは、一日を十分有効に使う方法です。

 今持っているノートPCのパーティションが気に入らない。CドライブとDドライブに分けているのだが、もう、ひとつのCドライブだけにしたくなってきた。というのも、色んなアプリを入れているとCドライブが一杯で、最近ちょっとネットを見るたびに「ドライブの容量が減ってきたので、クリーンアップしろ」などと五月蠅く言ってくるのである。
 で、再インストールしたいのだが、ひとつ問題が。そう、USBドライブがつぶれておるのである。持ってるCD-ROMドライブがUSBだから、これではインストールできないではないか。
 そこで、PCカードで接続できるCD-ROMドライブを探している。もうだいぶん古いものなので、中古市場にしかないだろう。オークションサイトはこういうとき便利だ。
 うろうろとサイトを見ていると、PCカードスロットに指すUSBドライブというのがあった。あれ、これならいけるのかな?とおもって、梅田のヨドバシで店員に聞く。すると「再インストールというのは、まったくの空っぽなので、このカードのドライバが入れられないから、ひいてはそれにつなげる製品も認識しないですよ」。なるほど、一理ある。
 仕方がないので日本橋のジャンク屋で中古CD-ROMを探すが、イイモノがない。あきらめてオークションに賭けよう。

 その後、難波に出てきた妻と合流し、松竹角座へ。テレビの公開録画に参加。松竹の芸人のネタをタダで見せてくれるのだからありがたい。

 二時間ほどで収録は終わり。その後、行きつけの日本酒バーに出かける。
 たまたま二人分の空席があり、カウンター席だったので、お店の人と仲良く話す。この店のママ(最高責任者?)といろいろ話ができたので、大変楽しかった。もちろんお酒や料理も(あいかわらず)サイコー。二杯で出るつもりが、倍の四杯飲んでおりました。
 家計が厳しいというのに、一杯2200円の酒を飲んでいる・・・(笑)

 帰りの阪急電車にて。酔っぱらいが座席に横になって寝ている。年の頃は私と同じぐらい、スーツ姿の(どう見ても)サラリーマン。お酒を飲んでいて気が大きかったからか、「大丈夫ですかー」などと声をかける。隣に外国人がいたのだが(心の中で「間池留」と命名)、彼と一緒に正気を取り戻させようと努力。
 というのも、横になっているだけなら一人で二人分の席を占領しているだけなので、まぁ「マナーの悪いヤツ」ぐらいなのだが、たまに反対側にぐらーっと倒れていく。反対側には女性が座っているのだ。可哀想に、酔っぱらいにもたれかかられそうなのである。
 さすがに西洋人はレディーファーストの精神が徹底していて、女の子の方にぐらーっといった時は素早く制止し、「おいおい」と声をかけていた。そんな彼を見ていて、俺もまぁほっとくわけに行かぬ、と思ったわけです。
 起こそうとするのに、彼は完全に熟睡。ひどいときはシートからずり落ちて、床にべったり眠りこくる。ここまで来ると私と間池留以外の乗客も「ひでぇ」と思ったらしく、みんなで担いで座らせ直す。車掌さんを呼びに行くと「金曜日は結構こういう人多いですからね」といいながら、次の駅で駅員さんを呼んでくれた。次の駅に着くやいなや、駅員さんが四〜五人乗り込んできて、「おきゃくさーん」といいながら担いで連れて行った。
 良いことをしたのかな。したんだろうな。
 ともかく、降りるときに間池留や横の人たちと「お先に失礼します、おやすみなさい」などと挨拶できたし、車掌さんも降りたときに「ありがとうございました」っていってくれるし、もたれかかられそうになっていた女の子も降り際に「ありがとうございました」なんて言ってくれるし。ちょっとの親切で人の輪が広がった。これは大変気持ちよいことですばい。

 話はガラリと変わるが。
 女が30代後半で、婚歴や出産経験がないのは「負け組」だそうだ。最近この「負け組・勝ち組」というキーワードをよく聞くようになった。ちまたで本が出ており、それの影響みたいですね。
 で、この10月に結婚する友人(女)が、30までに結婚できたから私は勝ち組だという。
 男にとって、こういうボーダーラインははっきりしないものがある。でもまぁ、とりあえず40で職がないとか、30でお給料をもらったことがないとかいうのは負け組なんでしょうな。っていうか、私は大学院に進学した時点で負け組だと思っているが。

 しかし、私はこの表現が嫌いなのです。
 社会的には平均値があって、統計的に負けと勝ちを分けることもできるかと思う。しかし、人間の幸福なんて、基本的に個人的なもんですよ。自分が幸せな生き方だと思っていたら、それで十分勝ち組じゃないか。私は社会的には負け組かもしれないが、個人的にはある目標のために生きており、その目標を設定したときからその目標に少しでも近づくように日々努力しているつもりだ。だから、「公的には認められないだろうが、俺はマイルール上では勝ち組だ」と信じている。
 こういう内的な目標を持たずして、社会的な平均値を参照しながら、自分の勝ち負けを論じるのは大ッ嫌いだ。なんで社会に迎合するんだよ。ヒットチャート上位の曲は必ずしもいい曲とは限らないのである。

 イラクに行って捕まって様々な迷惑をかけながらイラク人を嫌いになれないのでもっとイラクに残りたいという、究極のお馬鹿トリオも、彼らの中では自分は勝ち組だと信じているのだろう。でもあれは、公序良俗に反しているので、論外です。