そりゃ電子化ってこういうことだよね

論文の掲載決定!

「書かなければ死ね」の世界にいながら,実に6年ぶりに査読あり論文の筆頭著者になれました。いやー,久しぶり。

データも取りっぱなしになっていたものを掘り返して,やっと成仏させたようなところですので,なんら威張れることはないのです。ちょうどBehaviormetrikaがIFのつく雑誌になったという話だったので,応援がてらいっちょ出してみるか,というぐらいの気持ちでした。査読も早く,半年で掲載になりましたから,皆さんオススメですよ,ここ。

(ここからの話は,当たり前のことなのかもしれませんが,なんせ浦島太郎状態だった私にとっては新鮮な話でしたよ,というエントリなので生暖かい目で読んでください)

さて,書くときに「もうTeXでやりてえなあ」と常々思っていたものですから(文献リスト作るの大嫌い),それでもチャレンジしてみたのですが,まあ色々と驚くことが。

TeXの原稿とBibtex(文献)ファイルを用意して,もちろん図版なんかも用意したんですけど,それをネットの投稿システムにアップするわけです。そうするとしばらくすると向こうの方でウウーーンとコンパイルしてくれまして,コンパイルできたものがDL可能になります。で,問題なければこれで審査してね,と送るわけです。

最初はコンパイルエラーが出まくって,「なんだよ,原稿はかけてるんだけどサブミットできねえよ」みたいな状態でやってたんですけど,原因となる「カッコ閉じてない」とか「$マーク閉じてない」みたいなものを逐一直すと,あら不思議,ちゃんとPDFが出来上がるんですね(あたりまえだ)。ちなみにローカル環境では,こうした些細なミスはバッチファイルが「んもー,カッコ閉じておいてあげるからね!$マークもいれといたからね!」とフォローしてくれるからコンパイルが通るのであって,ちゃんとwarningメッセージを見てローカルで綺麗にしておかなきゃな,と反省しました。はい。

念のためにローカルでコンパイルできているPDFも一緒にアップしておいたら,「ヘイ,原稿のバージョンは一つしかダメだぜ。同じのが二回あがってるよ」と事務局から注意されたりもしました。うん,自分のソースファイルをもっと信じないとダメだね。

査読者とのやりとりはもちろんwebを介してやるわけですけども,再校のアップの時も同じようなスッタモンダがあったり。2,3ヶ月あくとやり方忘れてますわな。

ともかく,これでAcceptというところまで来たわけです。

そのあとは,これフリーで見られるようにするかい?との連絡が。そりゃその方がいいですし,雑誌側もそっちを勧めてくるので,じゃあそうしようとクリックすると「オッケー,3000ドルだけどいいかな?」と言われてびっくり。さんぜんどる!すみません,そこまで予算組んでませんでした,会員限定版・無料コースでいいです・・・。

そうか,自由になるのもこうやってお金いるんだなあ,今後は掲載料?として旅費並みに見積もっておかないとなあ,と反省したりしました。

さて次に,「掲載するにあたってこれで最終稿にしてええか?出版社の都市名とか抜けてるとこ直せよ?」という確認が来ましたが,直せるところは直して「もうこれでオッケー」とか,「版権云々はこれでいいか」みたいなやりとりがあって,ハイハイというてるうちに,すぐに公開されちゃった。Acceptの連絡から2週間と経ってないですよ。

かつて出した日本の学会では,Wordファイルで(TeXで原稿書いてても掲載前にWordにさせられたりしました)校正して,なんなら紙ベースで2校,3校とかやって。ああ億劫だなあと思っていたのですが,その辺の問題から自由になるわけです。TeXだからレイアウトとかも,出版社のフォームに流し込んでコンパイルするだけみたいで,ラックラク。

文献も自動的にコンパイルされるし,出来上がった原稿は引用文献なんかも相互リンク,文献リストからGoogleで検索に飛んでいけたりもしてるから,読む人もこっちの方が楽よねえ。これが全自動,筆者の手を介さず(もちろん編者の手も介してないとおもう),自動でできてる。doiもついてるし,筆者用のFull Text PDFリンクも送られてくるし。あはーん,電子化ってこういうことだよねえ。

あと今回,せっかくなのでORCIDにも登録しました。やるまで知らなかったんだけど,世界的に使われている研究者IDみたいなもんですな。論文からも飛んでいけるし,ORCIDのマイページみたいなもんにも自動的に文献リストができたわけです。普段,自分の業績リストを「わぁいアップデート,アップデートだぁいすき」といわんばかりに,こつこつ自分の手で更新していたわけですが,こうやってIDで紐付けられたら,今後はそれからも自由になるよね。当たり前だよね。

マイナンバーとかもこうやって,全部自動化して楽になるためにできたはずなのに,日本ではまだまだそこまでですね。。Researchmapも頑張ってほしい!だって,こうやって「電子化の正しい使い方」みたいな正解を見せられちゃったら,絶対こっちの方がいいもん。研究者は論文の中身だけに手間を取りたい人種ですからね。

あ,ちなみに論文にはOSFでソースコードもローデータも公開してます。今後はこういうところもオープンにしていかないとな,と思ってるんで。論文を読んで,「なんだよ,こっちの方がもっといいモデルになるだろうが」とか言ってくれる人がいたら,これはもう望外の喜びですので。みんなで幸せになろうよ!

 

Cite this article as:Kosugi, K.E. Behaviormetrika (2017). https://doi.org/10.1007/s41237-017-0033-9