Kosugitti's BLOG

アンドロイドは正規分布の夢を見るか

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2011 / 7月

「図書館戦争」は面白かった。

この本は,本屋に平積みされている頃から目をひいていて,いつか読みたいなぁと思っていた。
同じ著者の本で「阪急電車」があるが,こちらを先に読んでしまって,あまり面白いと思えなかったものだから(ノスタルジーは感じたけどね),この本もどうなんだろうか,と思っている内に文庫化されていたようで,文庫なら読んでみるかと手に取ったような次第。

妻が司書をしていたこともあって,図書館での戦い,というのは館長と職員の労働闘争とかかしら,と思っていたらおっとどっこい。完全に戦争ですね。武装集団vs武装集団の。しかも,目的が図書の自由,図書館の自衛にあるというのだから面白い。
出てくるキャラクターも非常に生き生きしている。続編もあるそうだから,是非シリーズ全て読んでみたいと思った。

アニメ化もされているそうですね。確かにアニメ化しやすそうな内容ではある。実写化は内容から言って映画化になるだろうけど,ちょっとキャラクターに合う役者がピンと来ないなぁ。ちなみに私は柴崎を頭の中ではしまうー(@よつばと!)の映像で再現しておりました。

ところで,後書きに著者が書いてあるのは,「これはジョークです。ジョークだといって笑えないと困る」という話。確かに,検閲があるとか,悪書を燃やすなんてのは,何がどうであっても許されないことだと思うのだ。焚書という単語は戦慄を覚えるね。

で,ふと気がついた。これ,かつてジョークでも何でもなく,実際にやってたよね。シーンは図書館ではなく,大学だけれども。

大学とは,一種社会的に隔離された世界にあり,常識的な社会からはアンタッチャブルだったはずだ。かつて大学は自治をうたっていた。つまり,大学の中では大学のルールがあって,社会に何を言われても「うるせぇ。専門家の判断に素人が口を出すな」といった風潮があったはずだ。そこで学生紛争が起こった。相手が現実社会の方だったのが問題で,その後は大学が社会と適切な(!)距離を取るようになって,今や大学でもキャリア教育をする時代だ。それでええのんか。大学の自治,自律を保つために大学防衛隊を組織しろとは言わないが,社会的外圧が学内の政治に注文をつけてくるのは異常だと感じるのだ。

この本は,一般社会(警察)と規制する官(メディア良化隊)と図書館(防衛隊)とが出てくる。後者2つがやり合っており,警察は第三者的立場。もちろん,一般市民はその外側にいる。

いっそ,一般社会から浮く道を選んでこそ,大学も生きていく方向性が見つかるのではないか。

などと思いながら,フィクションを楽しみましょう。



戦闘妖精・雪風

一言で言うと「これは面白いわ」である。

心理学の講義を受講している学生が,「今,戦闘妖精雪風という本を読んでいるのですが,人間と機械の違いとはどのようなものでしょうか」というコメントを書いてきて,なんだそれはと調べて行き着いたモノ。

書評を見ると,日本オリジナルのSFである,とか書いてあるので,SF好きの私としては手に取らなければならない気にさせられる。
しかし,同時に,検索結果で出てきたアニメ動画を見て,なぁんだマニアックなモノなのか,という気もする。しかも戦闘機がメインに描かれているから,ミリタリー・マニアの好むような話なのかも知れぬ。

という葛藤はあったものの,SFであるというポイントを信じて読んでみた。

読むと,これは確かにSFであり,心理学である。
非人間的・機械的と言われる主人公の,なんと泥臭くて人間的であることか!機械とは何か,生きているとは何かということを,深く考えさせられる内容である。

確かに軍隊モノのマニアックな文章表現なども含まれるが,それを越えて伝わってくるものが間違いなく存在する。

森博嗣の書く理系小説にでてくるのとは,またちょっと違った意味で非人間的,非文系的な主人公の考え方を通して,人間とは何かを考えさせられる良書だと思う。



イイかどうかは自分で決める

先日トルコでおみやげを買ったのだけど,その後「価値ってなんだろう」と同僚と話した。

値札がついてないところで値段の交渉をすると、価値ってなんだろうって誰しも考えるよね。でもそれは、価値は客観的で普遍的、世界のどこに行っても変わらない、という信念を持っているからにすぎない。その考えを突き詰めると、あるブランドの名の下に多くのバリエーションを集めるマクドナルドやUNIQLOに行き着く。或いはAKB48もそう。

その対局には、同じものが世界に二つと無い(例えばトルコ絨毯のような)物に、全く個人的な価値観で判断するというのがある。それがトルコやエジプトで経験した交渉型の値段設定。

面白いのは、交渉する時に、売り手が「あなたにはあなたの価値観がある。あなたの懐事情がある。だから買っても買わなくても良い。あなたが気に入って選んだものは、世界一のベストチョイスなんだ」と言ってくるところ。これが彼らの世界観なのだね。

これはマクドナルド化された世界にはないもの。価値はわからないだろうから,こちらで一元的に,統一的に決めてあげる。悪いようにはしないから,という信用でもって成立する。それはそれでいいことなのかもしれない。

例えば,昔大阪は日本橋の電気屋街では,「値切る」ことが重要だった。値札がついている商品を指さして,店員に「これナンボになりますか」と聞くところから始まる。そこで勉強してくれるお兄さんはいい人なので,次に買い物に行ったときもその人を目指していく。それがリピーターを産む原理だった。
ところがヨドバシカメラが大阪梅田駅に出来たとき,このルールが通じなかった。値切れない。減額分はポイント還元。ポイントがリピーターを産む仕組みになっている。グローバル化を肌で感じた瞬間だった。

電気屋で働いていた友人が言った。このやり方はフェアだから,もうこれで良いんじゃないかと。値切る能力がある人とない人とで,同じ商品の値段が違うのは,やっぱりオカシイよと。

一理あるな,と思った。
そして,今やそのやり方がいろいろなところで蔓延している。つまり,今の日本社会ではこの方が適応的な売り方なのだ。

さてこの話,大学教育にも当てはめて考えてみたい。

高校までの教育と違って,大学には「正解」がない。大学で行われている講義は,俺はこのように考えるがお前らはどうだ,という話であって,単一の答えを出すためのものではない。
この教員はマガイ物(パチモン)ではないか?本当のことを言っているのか?という真贋を見定める目が必要になる。大学とは学生が学生の価値観を磨いていく場であるべきなのだ。

学生には、自分の価値観を持ってもらいたいのです。世界に正解なんかない。不変の値段なんかない。
だから、教員の顔色を見るとか、質問して答えを期待するとかはやめて欲しい。いろんな商品を見て、自分で価値を決める。いろんな人間や学問を知って、自分の理論を作る。そしてそれは世界一のベスト理論。
それが怖い、いやだというなら、学問をやめて消費者になることですな。本質的に、学問は消費できないんだよ。

教育学部につとめていて,恐ろしいなと思うのは,教育の質を保証すると言うところだ。あるいは教員免許を全員が持てるように,教員採用試験をみんなが受けて,受かるように,指導していくという。学士力保障と同じように,学習の記録をトレースできるように蓄積していき,四年間ちゃんと単位を取れば,ちゃんと学習できている保障の足跡が残っているとすることだ。
これは画一化された商品を作ることと同じだ。あたかも工業製品を作るかのように,PDCAサイクルが重要だとかいう。
そんな商品が現場に流れたとき,個性的な子供を育てることが出来るのか?出来るはずはない。恐ろしいのは,それのどこが悪いの?という考え方にまでなっちゃってるところだ。

思考のベースに,「失敗したくない」というのがあるのだ。安全志向。
それは後ろ向きの姿勢だ。リスクを見積もって,リスクとベネフィットを天秤にのせて,勝てそうなほうに張る,という批判的思考を許さない考えだ。

失敗したくない,という志向性は,同時に学業的な成績が優秀な人間がいることが往々にしてある。
しかし,意欲はないけれども成績が優秀だ,という人間よりは,意欲はあるけれども成績は残念だ,という人間の方が俺は好きだし,指導しがいがあるのは圧倒的に後者だ。というか,前者は研究指導出来ないといっても過言ではない。正解を探しに来られても,俺の中にもそれはない。ある可能性は,本人の中だけのハズだ。

学部在学中に,それを見つけて社会に出て行って欲しい。それが見つからない人は,大学院に進学してはいけない。時間と金の無駄になるから。

ピカソもダヴィンチも,イイかどうかは自分で決める(byモダンチョキチョキズ

学生には,アメリカやヨーロッパよりも,イスラム圏の文化を肌で感じてもらいたいなぁ。怪しさ抜群で,自分の価値観について考えさせられるよ。



飛んできたイスタンブール,街をうろつくなど

イスタンブールに着いたのが朝,タクシーでホテルに向かい,チェックインしたのが朝の7時頃。
ちょっと朝食を食べて,さぁ学会会場へ行こうと。なんと,学会が7時半からやっているのね。
いろいろ行く方法を考えたのだけど,ホテルのミニバスを借りるのが一番安い&早いであることが判明。それに乗せてもらう。

学会会場は,結構警備が物々しくて,セキュリティ・チェックを受けて入った。治安は少し良くない,ってことかな。
初日の朝だからか,人はまばら。とりあえずポスター会場を下見しておこう,と探しまわって,結構果ての方にあったポスター会場に着くと,まだ会場の設営中だった。
初日はキーノートスピーチがいくつかあるぐらいで,特にやることもなくなったので,お昼ごはんを食べることに。
丘の上にある学会会場から,ロープウェイで降りられるんだけど,親切な警備員さんが「歩いたら15〜20分ぐらいだぜ」といってくれたので歩くことに。
しかし,結構歩いたのですよ。道がわからないことに加えて,歩く人のための街になってない。車がビュンビュン走るので,その中をタイミング見計らって横断する,というようなことを数回繰り返し,半時間ほど歩いてやっとトラムの駅についた。

お昼ごはんはグランドバザールで,ということで,そこにいってトルコ料理屋にはいる。
お店のオープンが30分後だから,まずは飲み物でものんで待っていてくれ,という。で,ビール。
しばらくして出てきたトルコ料理,肉も野菜もたしかに美味しい。西洋風でもありながら,東洋風のスパイスも感じられるし。
ケバブ(スペルはKebap)もよかったけど,トルコ風ピザもよかったなぁ。

トルコのお店の人は,働き者なのかサービスがいいのか,食べ終わったらすぐにお皿を下げに来る。これは夜のお店でもそうだったから,そういう風習なんだろうなと思う。

グランドバザールを少しうろうろして,いろいろなまがい物を見て楽しみ,変な日本語で語りかけられるのをかわしながら,ホテルに戻る。午後三時ぐらいなんだけど,日本時間の夜なので,俺の体はおねむだったのだ。
部屋に戻って数時間昼寝・・・。もっと寝ていたかったけど,体をならすためにこちらの時間の19時ぐらいに起きて,夕食を食べに出かける。ここも美味しかったです。

今これを書いているのは,二日目,5日の朝。こちらの時間で朝6時前なんだけど,目が覚めちゃった。日本時間のお昼ぐらいだから,夜更かしして昼間で寝ていた感じかな?今日はこれから発表があるので,ちょっと真面目に仕事をしてきます。



飛んでイスタンブール,機内映画でアバター

3日の夜出発で,イスタンブールにまでやって来ました。ヨーロッパ心理学会2011。
13時間の長い旅をどうやって過ごそうか,と悩んでおりましたが,結果二本の映画を見て,寝て,気がつけば付いたので,結構あっという間だった気分。

国際線の良いところは,サービスでアルコールがもらえること,機内で映画を見られることの2つ(次点でマイルが一気に貯まる,ということもあるかな)。今回もいい映画はないかなー,とあれこれ探してみた。結構本数がある。

インセプションは劇場で見た。ハリーポッターシリーズの,2,3,4ぐらいがあったけど,ちょっと見て「子どもっぽいな」と思ってすぐやめた。で,アバターを見つけたので,あ,これにしようと。

そこそこ有名になったので,面白いのかしらと少し期待したが,結論から言って最低,まったく面白くなかった。
面白くなかったポイントは次の3つ。

  1. 異なる生態系のカップルの描写の仕方が陳腐
  2. アメリカ的軍人キャラクターが典型的すぎる
  3. 最後がハッピーエンドで終わるなんて!

以下ネタバレ注意です。
まず第一のポイント,異なる生態系(宇宙人)でも,男女?のカップルが出来るのはいい。でも,特殊な感覚器官を持っているのに,カップルのするべき行為が人間と同じようなものとして描かれるんだよねぇ。想像力が貧困すぎるよな。アシモフの小説で,異星人の交配を描くものがあるんだけど(タイトル忘れた),それなんかは性別は三種類に分かれているし,交配の表現,その結果の表現なんかがとても独創的。そういう面白さがないよな。肌の青い種族の普通の恋愛でしたよ。

第二のポイント,これまたハリウッド的な軍人が出てくるんだけど,タフでストレートでしぶといキャラが,SFメカに乗って戦って,でも最後は肉弾戦になって,ってもうありふれたパターンだよねぇ。出てきた時から死亡フラグがピンピンしてるもんな。

第三のポイント,ハッピーエンドも途中から読めてしまう。あ,この手法で向こうに行けるのなら,一回目は失敗だったけど主人公は成功するんだろうな,ってのがよくわかる。映画の感想で「人間を辞めたくなる」とかいうのがあったけど,本気でそんなこと言えないよな。

ま,ひとことで言うと,極めてハリウッド的で,想像力の限界を全く超えることのない話だったということ。お金がかかってるんだろうな,と思わせるSFXはいっぱいあったけど,そこで映画は評価できない。俺はね。ちなみに3D機能はなかったけど,あったら評価はさらに低くなったろう。映像を見てびっくりしたいわけじゃないもの。

とまぁ,「ちえ,つまらねぇ。時間の無駄遣いだ。結構長い映画だったなぁ・・・・」と思っていたら眠りにつきました。

ついでに,次に目が覚めた時にファンタスティック・フォー2をみたんだけど,これは最初っからハリウッド的ヒーロー物であることを目指して作られているので,同様につまらなかったけどそこまで評価は低くないです。

ということで,ひとまず。




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