ミーム

 今日の非常勤は、山の上にある。

 雨が降りそうだったので、バスに乗った。坂道の道中を、バスだと途中まで運んでくれるので、ずいぶんと楽なのだ。

 帰りは降っていた。傘を持っていない学生数人と一緒になったので、タクシーに乗り込んだ。
 彼女らは、普段から気軽にタクシーを使っているようだ。学校の正門前まで行ってくれるメリットがあるし、なにより数人で割り勘にすればバス代(200円)より安くつく。
 しかし、驚いたのは、彼女らは見知らぬ人間とも乗り合いをするというのだ。

 最寄り駅のバス停にいくまでに、タクシーを待っている学生を見かけることがある。友達を待っているんだろうな、と思っていたが、今日の話で必ずしも友達を待っているのではないことを知った。同乗者=同じ大学の学生を待っているのである。
 彼女らは、5人で乗り込むという。そうすれば一人あたりの持ち分は、ずいぶんと安くなる。だから、目的地を同じくする人間が五人集まれば、必ずしも知り合いである必要がない。また、あまりにもこのルールが行き届いているので、もはや「ご一緒してよろしいかしら?」というような挨拶も不要だというのだ。目で見て「仲間だ」とわかればそれだけでいいという。
 タクシーの運ちゃんいわく、言葉を使わずに、手だけで合図することがあるそうだ。遠くから来る学生に、指を一本立てて「一人か?」と訊く。頷けばそれでよし。あるいは、指を四本立てて「いま四人集まってるの?」というのを訊くそうだ。ブロックサインですな。
 わざわざ挨拶したり、会話をするのはわずらわしい。それでも、坂道を歩くのは面倒だ。そんな中から生まれてきた、「適度にお互いを利用しあうルール」である。
 同情した学生曰く、「この大学に来て、そういう文化があるのに驚いた」「支払う人間は真ん中に座っている子。両隣からお金を集めて、代表して渡すの」。
 そこまで細かいルールが文化としてできているとは。
 この文化は、いつ頃発生したかはわからないが、次の世代へと脈々と受け継がれていくようだ。

 文化の発生。研究したら面白そうなテーマだ。Oくんならなんと言うだろうか(笑)

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