ユーザーイリュージョン

ユーザーイリュージョン―意識という幻想

ユーザーイリュージョン―意識という幻想」を読んだ。
昨年暮れから読み始めていたのだけど、分厚いので持ち歩くことができず、自宅か研究室でまとまった時間が取れたときに読む、というスタイルだったので結構時間がかかってしまった。

というのも、この本、オモシロイのである。
一度読み始めると、ぐいぐい引きつけられるので、まとまった時間が要るのだ。

本書のテーマは「意識」。意識は脳が作りだしているもので、実際には感覚器を通じて毎秒100万bitもの情報が伝えられるけど、意識に上るのは数十bitでしかないそうだ。しかも、意識は0.5秒遅れてやってくる。実際、我々が意識している、と感じるのは、脳が感覚器から入ってきた情報を元に作り出した「外界のシミュレーション」でしかないのだ。ユーザーイリュージョンとは、コンピュータのGUI開発で用いられる言葉で、CPUが背後で何をしていようと、ディスプレイに表示されるものだけで人が反応できるように、ユーザーに幻影を見せておけ、という意味らしい。まさに脳と意識の関係だ、というわけだ。

もっともこの本がオモシロイのは、この意識に関わる話だけではない。意識は中盤で出てくる話で、前段階として「情報とはなにか」という話がある。で、その話をするために、物理学や熱力学から話を始めるのだ。この本のおかげで“情報”の本当の意味がわかりましたよ。外情報(exformation)という表現も面白かったな。まさにソシオンがいわんとしていることだもんな。

意識の話が終わった後は、量子力学、宇宙、環境、政治の話などにスムーズに展開していく。エッセンスだけが欲しい人はちょっと怠い話ですけど。
全体としてかーなり面白かったです。

青臭くて嫌なんだけど、ちょっといい文章を引用しておきます。

私たちは自分の行動の主導権を意識にゆだねてはならない。
意識を働かせ、熟慮した上で、もっとも適切で思えることだけを実行するようにしてはいけない。
直感に従って行動すべきだ。
自分の生命を真剣に捉え、そうすることで他人の生命も尊重しなければならない。
生命は私たちが知るより大きな存在であると信じる勇気を持つべきだ。(p.498)