大晦日と水子の霊

 昨日から一泊で家族旅行に行っておりました。

 わけあって、妻が同伴でないのが残念だが、実家の連中と旅行に行くのは何年ぶりか。ウチの家族はまとまって移動することがなかったので、兄貴なぞは寝るときに家族四人が枕を揃えるシーンが珍しいね、と興奮する有様。

 辰口温泉に行ってきた。
 昨日の午後について、風呂に入り、食事をし、夜まで麻雀する。
 今日は朝からご飯を食べて、朝風呂に入り、小松や福井のあたりを巡るたびに。

 年末年始は休んでいるところが多いので、あんまり巡れるところもない。
 年中無休となっていたところを探し、ハニベ厳窟院というところに行くことに決定。
 日本最大級の大仏を作ろうとしているところで、まだ肩から上ぐらいしか完成していないのだが、この他にも「究極の地獄巡り」が出来るというのがウリ。

 小松駅からタクシーで往復5000円強。他に交通手段がなかったから仕方ない。タクシーの運転手が親切にも中を案内してくれた。

 市や町など、公的機関からの融資を断り、お賽銭だけでこの大仏を完成させようとしているらしい。とはいえ、ここ7年ぐらい制作の進展はなく、いつになったら完成することやら・・・と周りが気を揉んでいるそうな。
 大仏の中は水子の霊を鎮める小さなコケシがずらりと並んでいた。

 別の建物は、水子のお祓いをするところだったようだ。入ると怪しげなオッサンと若いカップルがいる。オッサンが「どうぞどうぞ」というから、中に入って拝観していたら、後ろの方で

 「・・・というように、父や母がいなければ子供は生まれてこないのです。それはあなた達も同じです。親子の縁というのは切れるものではありません。今日のこうしたあとでも、生まれてこなかった子供のことを考えて・・・云々」

 という講釈をしている。

 ・・・あの若いカップル、中絶しやがったな?

 どう考えてもそれしか合理的な回答がない。なんだかその場にいたたまれなくなって、家族全員後ろの方をコソコソと出て行きましたとさ。

 それにしても、大晦日になにやってんだ、あのバカップル。っていうか、そういうシーンに「どうぞ」って招き入れるなよ、オッサン。

 その上にあった洞では、願い事を書いた皿を飛ばして、箱の中に入ったら願いが叶うとか(兄貴だけ入れやがった)、地獄をテーマにした拝観コースがあって、楽しかった。もっとも、この地獄をテーマにしたコースは、「お受験地獄」とか「ストーカー地獄」、「ノーパンしゃぶしゃぶ地獄」、「セクハラ地獄」など、本当に地獄か?天国なんじゃないか?と思わせるような、社会風刺的な彫刻群でした。
 笑えます。小松にお寄りの祭は、是非。

 その後、チケットを変更して福井に移動。母が永平寺に行きたいと言うので、ルートを急遽変更したのだ。
 福井駅の側にあるものだと思ったら、そこから電車やバスで40分ぐらいかかる。帰りの電車は指定だったので、それに間に合うよう逆算すると、永平寺の拝観に充てられる時間は半時間ほど。
 永平寺は、古く、今まで見た中でも一、二を争うほどデカイ寺だった。そこを半時間で駆け抜けるように見る。山寺なので、順路が上に行ったり下に行ったり・・・
 「広かった、でかかった、あと寒かった」という感想ぐらいしか残ってない。ちなみに寒かったのは、スリッパがあったのに兄貴が「まぁええやん、すぐやろ」というので履かずに入ったら、かなり広かったために、副次的に生じた感想です。

 せわしない永平寺巡りをし、福井駅に戻る。雷鳥に乗り、京都へ。夕方には家に帰り着いた。

 家では妻が待っている。ダラダラ食事をし、酒を飲み、格闘技や歌合戦を見る。
 紅白のあとに蕎麦を食べ、行く年来る年をみて年を越した。
 こんなに落ち着いて新年を迎えたのも、古今例のないことである。

 来年もよろしくお願いします。