動因はあるのか

面接する側の年齢になってしまったのだけど,就職活動等で進路を考えることになった学生さんに言いたいのは,目的と手段を履き違えるな,あるいは目標設定の抽象度を間違えるな,ということです。

 

後者の例は,例えば「進学したい」とか「就職したい」という設定。学部一・二年生ぐらいに多いけど,例えば「専門性を高めて高い給料がほしい」とか「独り立ちするお金がほしい」というレベルまで具体化しないと。進学や就職はそのための手段です。

 

「恋人がほしい」という若者的悩みも実は間違えていて,「お前が欲しい」と極端に具体的になるか,「とにかく性欲を処理したい」という身も蓋もないほど欲望に素直になるかしないと競争に勝てないんじゃないか。自覚的であれ,無自覚的であれ,自分がどうなれば幸せになれるかという動因があるから努力するのだし,恋人というのはその目的達成のための一手段でしかないんですよ。

そこに気づくと,現代社会の異常なまでの恋愛至上主義がバカバカしく思えてくるはず。で,性欲や金銭欲で生きる人生ではなく,知識欲を満たす楽しみに気づくのが高等教育の狙いでね。

 

ちょっと横道にそれた。

 

あと,将来展望を聞かれた時に,チューリングテスト突破レベルの回答をしているのもダメ。留学経験を活かして語学を活用する仕事に就きたいとか,臨床経験を活かして人に関わる仕事がしたいとか・・・。そんなもんはほとんどトートロジーなのです。

語学を活かす仕事と活かさない仕事の比率を考えたことがあるのか。外国語なんかこれからなんぼでも必要になるし,もっというとほとんどSiriちゃんがやってくれるようになるぞ。

人と関わる仕事と関わらない仕事の比率を考えたことがあるのか。むしろ全く関わらない仕事を探すほうが難しいぞ。経済活動というのは他者との交換に基づくのだから。

ちょっとした役者なら,留学経験がなくても臨床経験がなくても,それがあるフリをした演技のなかで上のようなセリフは出てきちゃうだろう。だからそれを超えるような,本当にその経験がないと出てこないような目的なり意欲なりを出さないと。

 

コミュニケーション力とやらを上げたって,どうせそういう方法論を知っているだけのやつが大量生産されるだけで,経験や目的や生きる意欲がないとみなされたら終わりでっせ。

 

ゴルゴ13も「素人女が娼婦の真似をしても白けるだけだ」と言ってたけど,それと似たような構造を感じたような次第。