先生,πではなくてeでした!

結論から言うと,これに俺のやりたい研究が書いてあった。ストライク過ぎて,しかも答えも書いてあるもんだから,朝から興奮している。

物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)

なにかというと,システムがどのような状態のときに所謂「複雑」になるのか,ということについて,固有値問題を中心に書いてあるのだ。もちろんいくつかの仮定は必要とするが,要素同士の平均結合数が自然対数eであったときを境界に,複雑系になるという話である。ソシオン理論の藤沢先生は,これがπあたりのはずだ,としていたが,違ったのかもしれない(もちろんいくつかの仮定が完全にマッチするわけでもないので)。

 

さて,この本は,初版,第二版の両方読んでいるけど(持っているのは二版だけ),ブルーバックスの形になっているし,前の本が古くなってきたから,学生指導用にでも,と買ってみた。が,これが大当たりだったわけです。

実は,第二版にはいってから,固有値問題から複雑系を論じる,という11章が付加されている。固有値問題そのものについては,初版でもさらりと対角化がいかに便利か,という形で論じられていたけど,それが関係行列(本書では作用マトリックス,sayo matrixという。英語が素敵よなw)になったときの話は第二版になってから。

で,本全体の統一性を考えたときに,この11章がやっぱいびつだということで,今回の普及版では「やや長めの後記」になり,しかもwebでその続きが読めるという仕掛けになっている。

でもね,大事なのはこのweb版なんです!ここに複雑系係数の話が出てくる。

証明を一つずつ完全にフォローしたわけではないし,途中でポンと定理を導入されるので,今後時間を見て丁寧に読みこなして行かなければならないけど,この人の語り口調の特徴でそんなこと気にせずにスイスイ読めてしまった。最後まで。

 

なんでこんなに興奮しているかというと(筆者もかなり興奮して書いている),これは(数理)社会心理学の基本中の基本となる定理になりうるから。すなわち,人間関係,社会関係は複雑であり,線形モデルが成立しないということ,単純なルールやリーダーシップによる統制をするためには集団の構造をどのようにデザインしなければならないかということ,が論証されているわけです。

おそらくこの本をそう言う観点で読む社会心理学者はいないんだろうけどね。

 

一応最後に「πだ」とした師匠の本を宣伝しておきます。