同じ著者の本で「阪急電車」があるが,こちらを先に読んでしまって,あまり面白いと思えなかったものだから(ノスタルジーは感じたけどね),この本もどうなんだろうか,と思っている内に文庫化されていたようで,文庫なら読んでみるかと手に取ったような次第。
妻が司書をしていたこともあって,図書館での戦い,というのは館長と職員の労働闘争とかかしら,と思っていたらおっとどっこい。完全に戦争ですね。武装集団vs武装集団の。しかも,目的が図書の自由,図書館の自衛にあるというのだから面白い。
出てくるキャラクターも非常に生き生きしている。続編もあるそうだから,是非シリーズ全て読んでみたいと思った。
アニメ化もされているそうですね。確かにアニメ化しやすそうな内容ではある。実写化は内容から言って映画化になるだろうけど,ちょっとキャラクターに合う役者がピンと来ないなぁ。ちなみに私は柴崎を頭の中ではしまうー(@よつばと!)の映像で再現しておりました。
ところで,後書きに著者が書いてあるのは,「これはジョークです。ジョークだといって笑えないと困る」という話。確かに,検閲があるとか,悪書を燃やすなんてのは,何がどうであっても許されないことだと思うのだ。焚書という単語は戦慄を覚えるね。
で,ふと気がついた。これ,かつてジョークでも何でもなく,実際にやってたよね。シーンは図書館ではなく,大学だけれども。
大学とは,一種社会的に隔離された世界にあり,常識的な社会からはアンタッチャブルだったはずだ。かつて大学は自治をうたっていた。つまり,大学の中では大学のルールがあって,社会に何を言われても「うるせぇ。専門家の判断に素人が口を出すな」といった風潮があったはずだ。そこで学生紛争が起こった。相手が現実社会の方だったのが問題で,その後は大学が社会と適切な(!)距離を取るようになって,今や大学でもキャリア教育をする時代だ。それでええのんか。大学の自治,自律を保つために大学防衛隊を組織しろとは言わないが,社会的外圧が学内の政治に注文をつけてくるのは異常だと感じるのだ。
この本は,一般社会(警察)と規制する官(メディア良化隊)と図書館(防衛隊)とが出てくる。後者2つがやり合っており,警察は第三者的立場。もちろん,一般市民はその外側にいる。
いっそ,一般社会から浮く道を選んでこそ,大学も生きていく方向性が見つかるのではないか。
などと思いながら,フィクションを楽しみましょう。