山口KSPのこと

「「新たな社会心理学の展開と現状からの脱却」を考える」と題して、KSPで発表してきた。
中の括弧付きは昨年の社会心理学会シンポジウムのタイトルそのままで、要はその話について反芻しながらKSPっぽくディスカッションしましょうというところ。

私の主張は次の二点。
まず、亀田先生などのおっしゃる総合行動科学に行く!という方向性も嫌いじゃないけど、全部がそうなっちゃうのは嫌だ、というのが一点。第二に、じゃあ代案を考えろとなるだろうから、それなら、社会心理学会を解体して、総合行動科学方向とその逆方向(民俗学的な)へいくグループとに分ける。社会心理学会はその両者をつなぐバッファとしてのみ存在させる、というもの。

キーワードは、上のような経緯がある、あるいはこの現状に「自覚的であること」。

とまぁそういう話を色々やったのです。すると各先生から、「そもそもそういう革新系と保守系(これは私の言葉の選び方が悪かった・・・)?ってのがあるのか?」「いつから二極化するようなものになったんだ、そもそも雑多な世界でしかないじゃない」という話がでたり。統計の問題、評価の問題など、いろいろな現状を踏まえて議論がでました。

せっかくなんで、議論時の面白話を箇条書きで記録しておく。

  1. Behavioral ScienceかSciencesか。つまり、単数形か複数形か。K先生は複数形しかありえないという。T先生は単数形を目指している。
  2. 行動科学、Behavioralという名前をFestingerが選んだのは、「他の言葉は全部取られていて、消去法的にこれしかいいのがなかった。」
  3. 今の社会心理学業界は、時代の中でなんとか人目を引こうと、節操なしに手を出しているように見える。いつの時代も、時代の大きな波と小さな波に翻弄されるものだけれども。
  4. A系列、B系列のように社会心理学会における「共通言語」を使うグループをカテゴライズすることは、系列同士の断絶も意味しかねない。それでよいのか。しかし、共通言語がなくて会話できないよりはまし?コストとメリットの比較でかんがえなければ。
  5. 社会との接点を増やし、実務家を取り込むことでもっと雑多にする、という方向性もある。実際学会ではその方向に進むことも考えられているようで。
  6. 理学と工学のように、Social / Group Enginieeringがあってもよい。
  7. 理学は関数f(x)を求めることが目的。工学は関数f(x)を最大化or最適化するのが仕事(max(f(x)),opm(f(x)))。そもそもやっていることが違うので、一方が基礎で他方が応用、という言葉は大変マズイ。心理学も基礎系と応用系、という言い方はマズイ。
  8. 社会心理学者の一番の才能は、ものをシステムで考えることにある。全体と部分の調和。
  9. 実務的にやろうとして、下手な自己啓発セミナーにしかならないというのは個人の力量の問題。研鑽せよ。
  10. 社会心理学に必要なのは、豊かな人間性。そんなの教育できるのか?という問に対する答えはYes。認識論、周りを面白がる精神、他学問に対する尊敬があれば、周辺科学と楽しくやっていける。
  11. 「自分は社会心理学である」というアイデンティティ、結局自分の世界を狭めている。目の前にある興味あることを楽しんでいる、それだけでいいじゃないか。

まだまだ自分は小物だなぁ、と感じました。さぁてこれからひとつ、頑張っていくかね。