インセプションをみてきた。
他人にオススメできる映画だ。もっとも、複雑な内容なので、映画は頭カラッポにするために見るんだ、という人には不向き。
みていて、マトリックスとの対比をしてしまう自分に気付いた。
インセプションの基本的なテーマは夢。夢の中ならなんでもできる、という点はある意味マトリックスと同じなのだ。
映像の新しさもあって、ますます比較してしまう。
その上で、エンターテイメントとしては、やはりマトリックスの勝ちかな、と思うぞ。
マトリックスとの一番の違いは、階層構造になっていること。即ち、夢の中で寝て、さらに夢を見るのだ。これが話を複雑にする。あとは、階層ごとに異なる時間の流れ。こう言った点が話を複雑にし、同時に膨らみを持たせているのだ。であれば、エンターテイメントとして、複雑さと面白さのバランスが映画評価のポイントとなるだろう。
マトリックスも複雑にしようとしたら、もっと複雑にすることは可能だった。が、あの映画はエンターテイメントをとったのだ。2,3のエンターテイメント臭さは嫌いだが、全体として、私はマトリックスの方が潔くて好ましいね。
あとは愛情の描き方。マトリックスはただのホレタハレタで、しかも主人公は生まれ持ってのヒーローだ。インセプションは、普通の人間が普通に夫婦愛、家族愛を扱う点が好ましいかな。
最後に、映像技術。インセプションも多くのCGを使っているけど、無重力空間の表現など、できるだけ使わずにやっているところはいい。しかし、アリエナイ世界の表現については、最初にやったマトリックスの凄さが群を抜いており、インセプションはその新規性を超えられていない、と思われた。勿論、オリジナリティが高いことだけが評価ポイントではないんだけど(適切さ、が必須)。
ちょっと胡散くさいことをいえば、自然科学的客観性に疑問を呈し、コペルニクス的回転をしめしたマトリックスに対し、階層構造という胡散臭さを入れた現象学のようなインセプションは、より現代的かな、と思う。が、ヒーローとヒロインのロマンスすら削ぎ落とし、身体の快楽だけならドラッグだらけでも良い、という世界観まで描いちゃった日本アニメ(攻殻機動隊)の方が一枚上手だねw
そうそう、蛇足を一つ。
最後のワンシーン。ゆらゆら…で終わったところは評価する。見るものに余韻をプレゼントしてくれたんだもんね。俺はハッピーエンドだったと信じますけどね!