我が地方は一日遅れで配達されるので、昨日が発売日だった二つの漫画をさっそく買って読みました。いやー、どちらもいいねぇ。
以下コメントしますが、ネタバレあります。注意。
おお振りはトラウマを持ったエースピッチャーの成長を中心に描かれる漫画で、その専門性が高く評価されるのだけれど、ストーリー性も非常に高い。特に今回、負けたのがよい。スポーツ漫画を楽しませるためには、やはりどんどん勝っていく、負け知らず、という強いチーム(主人公)を描く事になりがちだが、問題はどこで負けさせるか。「帯をぎゅっとね」とか「はじめの一歩」も、負けることで次があることを描き、うまくいく。一度も負けずに面白いスポーツ漫画は、素人チームがあれよあれよと地区予選を突破して甲子園で優勝しちゃった!みたいな話になるのでどうしても嘘くさくなり、嘘くささを隠して面白さまでつなげられるのは「緑山高校」レベルを置いて他にない。
ともかく、15巻が無性に楽しみになる、そんな14巻でした。
ジャイアントキリングはサッカー漫画だけど、監督の漫画であり、クラブチームの構造・機能、中でのメンバーのあり方、リーダーのあり方についての漫画。これはグループダイナミクス、コーチング、集団コンサルタントのテキストとして使うことができるほど完成度が高い。
例えばこの漫画に出てくるセリフを、そのまま研究指導のシーンに当てはめてみよう。
ある選手が移籍するということになって、他の選手がなんで監督やフロントは放出するんだ、引き留めないんだ、と騒ぎ立つシーンで、あるベテラン選手が言う。
俺たちはクラブに雇われているからプロなのか?
ちがうだろ。
自分の体ひとつを商売道具にしてプレーする、その信念があるからプロなんだろ。
このセリフ、研究者の定義として次のように言い換えられる。
俺たちは大学に雇われているから研究者なのか?
ちがうだろ。
自分のアタマひとつを商売道具にしてプレーする、その信念があるから研究者なんだろ。
プロ、研究者、カウンセラー、ビジネスマン、クリエイターなど、何かになる!という人に当てはまるのだ。
これはプレイヤーの話だが、今回の14巻、この話の前にはリーダーがフォロアーとどうつきあうか、どうやって話し合うか、どうやって闘う集団をデザインするかについて、ヒントがちりばめられている。そして既刊14巻全てが、このひとつの美しい理論的思想のもとに貫かれている漫画なのである。
もちろん、現実は漫画のようににうまくいく話ばかりでもないだろう。それはグループダイナミックスという学問が、直接現場に貢献できず、アドバイスをするにとどまったり結果を解釈するにとどまっている、と批判するに等しい。しかし、グループダイナミックスという学問は一事例をすこし抽象化した一般理論として形成されている(それを目指す)ものである。
逆にこの漫画は、理想的なグループダイナミックスの典型的事例を敢えて仮想的なおとぎ話として見せている、そんな教本だと思うのだ。
ちなみに、ETUも負けます。負けまくります。負けるどころか連敗します。それでも勝ちの喜びで読者を惹きつける漫画なのです。