「笑いの方程式―あのネタはなぜ受けるのか (DOJIN選書 10)」を読んだ。
ほとんどジャケ買いに近い。パッと見てさっと買って一気に読んでしまった。主な理由は、出てくる芸人がだいたい知っている人たちで、非常に親近感がわいたからだ。同時に、私も笑いについては評論家的に一家言ある(と思いたい)ので、自分の内なるテーマと合致するからである。
読んでみると、笑いの分類方法についてはなかなか良い感じで、芸人に対する評価も私とそれほど変わらないようである。ただし、笑いを構造化したモデルはあんまりわかりやすいものではないと思う。
あと、これは私が俗に言う「ダウンタウン信者」あるいは「松本人志信者」だからかもしれないが、この本の中で分類されている「シュール」の捉え方が小さすぎる。基本的に、ダウンタウン以降の笑いは(99やキングコングなど動きで笑わせるタイプをのぞいて)、非常識の中に「異世界」を盛り込むことにポイントがある。そういう意味では、「シュール」の要素を漫才界に持ち込んでいるもの全て、ダウンタウンの考案したものなのである。このように捉えると、本書で扱っている、あるいは現在のお笑い界の主流はほとんど全て、ダウンタウンに源流を認められる。
そうすると、笑いの評価次元は、いかに「異世界」であるか、言い換えるといかに現実と直交しているか、にある。
もちろん、形式美、演技力などで評価すべきところもあるが。
とまれ、なにかを批評的に見る、という訓練になるのは間違いないので、多くの人に読んでもらいたいものである。
F先生の言葉を思い出す。
なぜ「かわいい」のか、なぜ「きれい」のか、なぜ「おもしろい」のかが言えなければ、作品の真の良さがわからない。
本当によい作品は、直感的によいし、じっくり味わってもよいものである。
ピピピピピカソもダビンチもいいかどうかは自分で決めるが、我が内なる基準を明らかにすることで、人生は味わい深くなるのだから。