IMPS2007に参加。
自分の発表では3-modeって何?と聞かれることが結構多かったので、これって正しい用語じゃないのか、と少し心配になった。でもよく考えたら、3-mode Analysisのセッションがいくつか設けられているから、単に広まってないってだけか。
学部時代のS先生とお会いした。いまや友人mや同期のSさんの指導教員であられるそうで*1。懐かしい話だけでなく、いろいろ刺激的なお話をいただいた。
お昼ごはんをご馳走になりまして。その席で学会の話、ソシオンの話など。ソシオンを意外と正しく評価してくれていることに驚いた(失礼?)。やっぱりこの先生、只者ではない。
その昔、学部時代の指導教授のところに相談に行っていた時の話。歩きながら相談中、F先生が「えー、とあれはなんだっけな」と言いながら、いきなり(何の前触れもなく!)S先生の研究室に飛び込んだ。S先生は来客中・相談中だったが、F先生が「あ、ごめん、あのな、○○○ってどうだっけ」と聞いたところ、S先生も嫌な顔ひとつせず(嫌な顔する暇がなかったのか、F先生のそのような所行になれていたからか)、「それはこの本に書いてある。ほれ、ここだ」とサッと本を取って示したのである。私の疑問はそれで解決したのだけど、何よりF先生とS先生のその異様な行動に驚いたことを今でもはっきり思い出す。これが学者って生き物か、と。常に学問に対する構えがないとできないことですからな。
そんなS先生だが、今回、ご自身でも発表されている。
心理学の業界には、尺度の信頼性を示すα係数というヤツがあるのだけど、これなんか古いからもう使うな、これからはω係数だという話である。
α係数は、私自身も未だに学生に教えてはいるけど、信頼性の下限を与えるだけで、精度の高いものではない。阪大のK先生は、90年代に今後10年以内にαはなくなると予言し、外れてしまったが、SEMやIRTの観点から見たらとっくに死んでいてもおかしくない係数なのである。
何で死ななかったか。理由は簡単、例えば社会心理学者にだって、手計算で算出できるからだ。
あるモノが流行するには「単純さ」「わかりやすさ」が重要だ−これもS先生が「僕からの遺言な」と言いながら何度も強調してくれたポイントだけど、まさにその一点でのみ生き残っている係数なのである。
ω係数は、実は昔から提案されているもので、今回のS先生のご発表はそれを多因子モデルに展開したk−ω係数にしたという点がウリ。しかも簡単な代数的な演算でできるので、大学院生レベルであれば手計算可能なものである。先生ご自身は、エクセルでデモンストレーションされていたが、それ用のマクロ、ソフト、パッケージを作るのに苦労はないだろう。
おもしろポイントは、これがCattell-Tujiokaの流れの延長線上にあるということ。理論的・歴史的系譜の一貫性があるのです。まさに正当派なんですよ。
理論的一貫性という観点は、とても重要なポイントである。一因子構造を仮定して尺度を作り、α係数を出して云々というのが尺度構成法のひとつだけど、尺度を作って探索的に因子構造を探ってから、信頼性係数を考えるというのもやっぱりありうるわけで。そういうとき、多因子構造だったときに、各因子に寄与する項目だけのα係数を算出するというのは、論理的な美しさがないわけです。それをこのωは解決してくれるのだ。院生の頃から、俺もなんでαをいちいちつけるんだろう、と思っていたけど、ちゃんと解決できるもんだなぁ!
歴史的系譜の一貫性については、本質的な問題ではないのです。学問に必要なのは真実性であって、正当派かどうかなんて価値はないんだけど、それでもあると少し嬉しかったりする。自己満足のレベルでね。T先生の教えを展開できるというのは、弟子として誇らしいところでもあります*2。
ともかくまぁ、俺も頑張ってこっちを宣伝していこうっと。
他にも色々話をしていて、社会心理学者をやりながら方法論にこだわりすぎる自分ってどうなんやろ、と思い悩んでいたりしたんだけど、S先生に「あんなしょうもない学会にはいっとるんか。それやったらこっちに入れ」と言われたとき、パッと世界が開けた気がしたね。「ですよねぇ!」と真っ昼間・ノンアルコールで大興奮してしまいました。
あー、楽しかった。
追伸。誰かS先生にもっと時間をあげて下さい。一週間12コマって、研究する時間がなさ過ぎます!!