本当は昨日読み終わって、昨日日記に書く予定だったのだが、今日までずれ込みました。
最近読んだ本を三冊ほどご紹介。
まずは「神社の系譜 なぜそこにあるのか (光文社新書)」。神社の配置にどういう意味があるか、を書いている。第一章こそ怨念のこもったクビをどうするか、云々という話だったが、そのあとは一冊を通じてだいたい「自然暦」に基づく配置の話。すなわち、ある神社から、春分の日の日の出の方向に○○神社が、日没の方向に▲▲神社が、夏至の日の日の出の方向に××神社が・・・という感じ。だいたい基本は東西のラインで、季節によって多少ずれるから、それに沿った線を引くとまた別の神社がある、という流れ。面白い視点だとおもったけど、すでにこんな話はその業界では当たり前なんじゃないか、ありそうな理論立てだ、と思ったらそうでもないらしい。まぁ固有名詞を覚えるのが苦手な私としては、その神社の場所に行っても「なんかそんな話があったなぁ」と思うだけで、身のある知識にはならなかったが、それはこの本が悪いんじゃないので、興味を持った方は読んでみてください。
次は二冊一気に。
「美しい国へ (文春新書)」と「貝と羊の中国人 (新潮新書)」。
前者は安部晋三氏の本です。安部はこの秋から総理大臣になる人かもしれないし、そんな人の考え方を知っておいても良かろうと思って読んだ。
中国人、の本は目から鱗。かなりオススメ。
古代中国に殷と周という国があったが、周が西から殷を攻めて征服したとき、二つの文化がぶつかったという。殷は貝の文化=財政的感覚に優れていた国家で、形ある物材を重んじる。周は遊牧民の、羊の文化=精神的で、無形の「主義」や「理想」を求める。この二つの考え方が今の中国人にも受け継がれている、という出だし。なかなか説得的で、具体例も面白く、多少ロマンチックでもある。中国人の精神性を学ぶには良い本だと思う。
本の内容はさておいて、少し政治的な観点からお話しさせて頂く。
安部ちゃんの本と、中国の本は平行して読んでいたのだが、どちらも非常に感じがいい。
安部ちゃんは右、すなわち保守的であると考えられている。同じ政策の議論も、左の人間が書いたら全く違う文脈になっていただろう。また、右の人でも、例えば小林よしのり氏のような話し方では、極端すぎて読み進めるのが辛くなっていただろう。少なくとも一気には読めなかったはずだ。
中国の話は左の人間が書いたら気持ちが入りすぎているし、右の人間が書いたら毒が多すぎる。
その点、この二冊は、右すぎず左すぎない。現実をしっかりと見据えて、右の意見も左の意見も(そして筆者の意見も)書きながら、どうでしょう、と語りかけてくる感じ。そのバランス感覚がよいのだ。言い換えれば、荷重抜きにして、純粋に知識や理論でもって議論を進めようとしている。
感情が根底にある議論は信用できない。俺も未熟な人間なので(そしてこの未熟さはおそらく一生改善されないだろう。20代のあいだに十分な修正が出来なかったから(笑))、頭ごなしにカッと言われると、何をっ、という反骨心がわいてくる。例えば、八月に入ったとたん昭和天皇の談話が云々とか、東条英機のメモが出てきて云々、というニュースがでてくる。これに触れると、ムカッとしてしまう。何で今やねん!どうせガセネタやろが!そんな話を聞きたくもねぇ!と思ってしまって、まじめに議論したり考えたりする気がなくなる(誰かやってくれと思う)。
そういう感情を抑えて、感情的に左が嫌いだとか、中国・韓国が盲目的に好きだとか嫌いだとかいうのではなくて、歴史や未来を考慮に入れながら国のことを思いたい。そのための、よい資料となる二冊だと思う。