行きの電車の中で10分ほど本を読んでいたが、眠くなってきたので眠ろうとしたとき。
俺の隣に人が立った。電車の中で誰にというわけでもなく、とうとうとしゃべり続けるタイプの人である。
その人は、十三に着くまでの25分間、いかにH立製作所がひどいところかを説明するのである。以下彼の談。
「それにしても、H立製作所はえげつないよね。
寮に入っていて・・・(中略)・・部屋に盗聴器があったのね。そんなもん、会社ぐるみでやっているに決まっているよね。H立製作所はえげつないよね。寮の管理者にいいに行ったんよね。そしたら医者を紹介して、お前はおかしいとか言って、睡眠薬をかがすのよね。そこから二年間、精神病院に放り込まれたよね。ひどいよね。暴れると独房に入れられるからね。ひどいよね。
裁判に訴えたら、裁判長が「きみは裁判を受ける権利がない」っていうのよね。ひどいよね。H立が手を回してるのよね。会社とのやりとりの音声データも全部取ってあるのに、裁判所は証拠として扱わないっていうのよね。あげく、裁判では証拠がないからと言って裁判できないっていうのよね。全部ぐるなのよね。ひどいよね。
会社を退社しようとしたら、「君のためにならないから」とかいって、やめさせてもくれないのよね。えげつないよね、H立製作所は・・・」
眠れないし、どうにも俺に向かっていっているように思えるから(立ち方から)、気になって気になって・・・いろいろ聞いてしまいました。
さて、彼の盗聴器は存在するのでしょうか。