読書案内

他人を許せないサル―IT世間につながれた現代人 (ブルーバックス)を読了。すぐに読み終わった。感想=買ってはいけない。

作者自身、冒頭で「新書は今や手軽に読めるモノになった」というようなことを書いておきながら(きっとこれが筆者の精一杯の愚痴だったのではないか)、その悪い例の典型のような新書である。

邪推するなら、前著、「ケータイを持ったサル」が売れたので、出版社が是非続編を、と無理矢理筆者を説得して書かせた本という感じ。何が悪いといって、内容がないのである。本の薄さでわかる。明らかに薄い。内容はもっとだ。別に書きたくなかったら書かなければいいのに。でも売れるから、出版社は書かせるんだろうな*1

前著は心理学の実験に基づいて、世相に一言言わせてもらうなら、というスタンスだった。
今回はほとんど基づくデータがない。なので、筆者の気持ちだけである。その気持ちというのが「昔は良かった、現代っ子はダメだ」というものである。世の中の書物にこの手のモノは多い。というのは、本を書くのは結構お年を召した方が多いから、自分の価値観に照らすと「現代」の変化スピードについて行けず、結果、恨み節になるのだろう。もちろん、これは言い方を変えると、年をとって自分の意見を持った、ということなのだが、それがイコール若者批判になるのが困るのだ。年をとって自分の意見がないのは一番マズイが、凝り固まるのもよくないよ。今回のケータイ世代云々というのについても、筆者はもはや基本的に「世代が違うからな」と言って切って捨てられるからグダグダ言えるのだ。今を生きる我々10〜30代の人間にとっては、「相かもしれないけど、適応しなければならない現状」なのである*2。「だからどうするんだ、じゃあ今どう生きるのだ」ということを考えねばならぬ。そのときに、筆者のように、論拠が自分の目から見た世間、という主観的意見だけだったら、考える肥やしにならないのよね。ちなみに引用に自著が多いのも辟易した。ひどいときは、自著の一部を丸ごとコピーしてきて、「○○と言われている(orすでに筆者は指摘している)」という。しらんがな。ページ数稼ぎの水増しか。

ということで、この本の評価は買う価値がなかった、デス。

*1:その戦略に乗せられて買った俺も俺だ・・・。言い訳するなら、買う前からダメそうなにおいはプンプンしていたのだが、疲れていたので買ってしまったのですよ。疲れていると、難しい専門書を読む気がしないので、雑誌気分で新書やマンガを手に取ってしまうのです。

*2:もちろん、必要であれば改革せねばならない、ということも視野に入れての現状ね