「データ分析のための線形代数」は本当によい本です

データ分析のための線形代数

データ分析のための線形代数」は本当によい本です。5章,6章の辺りに多変量解析の秘密が全部書いてある。

秘密,というのは私にとっては本当に「秘密」とされていて欲しくて仕方のない情報だったからである。
学生時代,今は亡き辻岡先生に因子分析法を学んでいたところ,行列の演算は教わるのだが固有値解法は教わることがかなわなかった。行列がベクトルに分解できるのです,と言われても「それはなぜですか」と聞きたくなる。ので,聞いてみたら,「学部2年の君にはまだ早い」と言われた。専門家だけが知っている秘密があるのだな,とそのとき悔しかったのが未だに記憶に残っているのである。そこから自学自習して,固有値というキーワードを見つけ,線形代数の本をあたり,やっとその答えを見つけた。今から思えば,確かにいきなりこれを講義で教わったってわかんなかったよなー,と納得さえする。その悔しさもあって,拙著「社会調査士のための多変量解析法」では辻岡先生のノート+α,ぐらいまでは踏み込んで書いてみた。

私の本で,十分かどうかといわれるとそれはわからない。一つのヒントを増やした,というぐらいの意義しかない。むしろ,+αじゃなくてもっと教えてよ,となる(特異な?)人もいるかも知れない。

そんな人にはこれ。この本ですよ。「データ分析のための線形代数」は本当によい本です。5章,6章の辺りに多変量解析の秘密が全部書いてある。
固有値分解でどのように行列が分解されるのか,ベクトル空間をどうやって見つけ出すのか,それはどのような性質があるのか,データとどう対応しているのか。それぞれ図入りでていねいに解説してある。計算も出てくるが,そのプロセスを逐一表記してあるので,中学生程度の「文字と式」が出来る人は理解できるようになっている。

来年度の院の統計授業ではこれをテキストにする。臨床家を目指す数学嫌いの人間でも,これなら出来るはず。
久しぶりに間違いなくお薦めの一冊です。