後期が始まりました。
徐々に対面授業も解禁。後期の授業どうしますか,と聞かれたので一応対面で申し込んだ。オンライン授業の一番の難点はPCを使った演習の時に助けてあげられないことで,こればっかりは横について指示できるほうが圧倒的に楽なはずなので。それに,対面で申請しておいて対面しないというのはできそうだけどその逆は無理だと思ったから。
ということで,夏休み?の後半は毎日のように授業準備。事前に話をする内容を文字起こしして,原稿にしようとしたのだ。授業も短縮で全13回になったから,12講分ぐらいの文字起こし。これはなかなかヘヴィだった。事前にシラバスは詳細に作っておいたんだけど,時間が変わるし,原稿にしてみると思っていたよりボリュームがあったな/なかったな,ということでシラバスの方も書き直しが必要になった。
とにかくなんとか原稿を授業が始まるまでに書き上げた。これを読み上げるだけ授業になるし,オンラインで受講する人はこれを読むだけでいい,というような教材を書いたつもりだ。全部で700ページになったので,これはもう本を一冊書き下ろしたようなもんです(実は,前期の授業のスライドを全部図にして取り込んだので,半分はスライドぺたぺたしただけのもの。実際,一コマの原稿は2万字ぐらいです)。
ということで,この資料を提げて授業してきました。第一回は受講生の1/3弱が対面。残りはオンライン。
授業の準備は面倒で,PCでビデオ会議をつなげておき,万一のためにiPhoneでボイスメモ(録音)開始。PCには会議用のスピーカーマイクを購入してそれを前に出す。で,PDF画面を共有しながら,Sli.doでオンライン・オフラインの人からいつでも質問してもらえるように配慮。原稿を読み上げるだけ,と言いながら一言一句読み上げるのもセンスがないので,所々かいつまんだ感じで話すんだけど,元の原稿に立ち戻りながら(何行目のこのあたりに書いてあります,とか図**.*のここを見て,とか)トーク。
Sli.doでのコメントだけでなく,チャット欄に書き込まれるコメントもあるので,それもチラチラ見ながら・・・まあなんとか終わりましたけど。終わってからびっくり,ビデオ会議の録画忘れてた。かなりのマルチタスクだったから,ボタン一つ押すのもそりゃ忘れるわなあ。今後こういうことがないようにするためには,ビデオカメラを撮りながら・・・というのがいいかなと思うんだけど,そうすると授業の準備だけでまた時間がかかるぞ。
よく考えたら,これって「演じる人」「録画する人」「サイトの反応をチェックする人」など複数の撮影スタッフと共にやるべきTVショーなわけですよ。これを一人でやろうってんだから,無理があるわね。翻って,春からのオンライン授業対応も,みんなよくやってるよなあ。なんだかんだ言いながら,大学人って社会人基礎力があるんだよね。新しい物好きの人も多いし,便利なデバイスやツールは積極的に取り入れていこうとする冒険心もあるひとが多いと思うし。
ともかくこれだけエフォートをかけてやってみた。で,ふと「オンライン」と「オフライン」の授業の違いはなんだろう,と考えるわけです。しかしまあ,どっちがいいとかわるいとか,言い切れるものじゃないね。社会的には「大学も元に戻せー」なんて圧力をかけてきてるけど,対面授業といっても俺の顔が見たかったわけじゃないだろう。学ぶということだけであれば,今回準備した原稿を読んでもらえれば十分じゃないのか。テストの点数も,平時とオンライン授業の時とで違いはなかったぜ。
授業をする方としては,「話すこと」「動き回ること」などが疲労感や達成感にも繋がるので,なんか仕事した気になるってのはあると思う。でもそんなもん本質的な評価次元じゃないよなあ。学生の反応がリアルタイムでえられるのは,とてもいいこと。PCの画面を相手に喋っていると,虚無感が半端ないからなあ。でもこれはPCの前でコミュニケートするのが問題なのであって,講義のように一方公的に伝えるのであれば,話すのではなく読み原稿を渡すので十分だろう。
オンラインではその後の振り返りシートで,キーボードを使って学生とやりとりしたけど,これってオフラインで授業が終わったらいなくなる学生がいっぱいだったんだから,それに比べたらコミュニケーション量は増えてるよねえ。オンラインでもいいことはいっぱいあるんだ。
対面授業に,授業をする方,される方はお互い何を求めているんだろうな,ということを考えながら後期は進んでいくことになりそうです。ただ授業を提供する方は,「どちらでも受講できるように」という配慮がいるので,どちらの準備もしないといけないから大変だということ。しかも昨日は台風が来ている,という日だったからなあ。学生は濡れるのが嫌だからオンラインで受けよう,って言えるけど,こっちは雨が降ったから授業行きたくない,とは言えないわけで。やれやれだぜ。
そうそう,この話はいくつか持ってる授業の一つだけについてのものです。大講義のやつなので,そもそもそう方向コミュニケーションがない授業のことなのです。大講義のやつが複数コマあったらこんな準備はできないな。
あと,ゼミとかはやっぱりリアルタイムに反応してコミュニケートできる,対面が断然いいです。もちろん人となりを知っている間柄であれば,オンラインでもある程度うまくやれていいんだけど,微妙な間は対面でないとうまく伝わらないのです。逆に言えば,SF的にもっと技術が進んで,タイムラグなんかなくホログラムなんかで立体的に写し合いながら,同時並行的に会話できるような世界が来れば,何もかもオンラインになるだろうなという気はする。さて,そんな時代は生きている間に来るのかな?