行動計量学会二日目

今日の朝は「特別セッション非対称データの分析(1)」に参加。

トップバッター,千野先生のご発表は非対称MDSの系譜をまとめたようなお話。千野先生はヒルベルトみたいに,非対称MDS業界の「解くべき問題」を提起したいのかなぁ。

続く有向符号グラフによる社会構造の分析(北野先生),は実際のデータを扱ってなかったのでなんとも評価できないけど,モデルとしては新しいものを提案していた。もっとも有向符号グラフについては数理社会学で古くからやっているわけで,これらの先行研究に比べて特に新しい!とか便利!とは感じなかったな。

次は単相三元データに非対称MDSを適用するはなし(中山先生)。実際のデータ云々の話よりも,DataEngineProjectというのがあって,web上で統計分析をするサービスを多摩大学?がやっており,そこに非対称MDS(Okada and Imaizumi Model)が利用できる形で公開されていて驚いた。Rのパッケージとして配布するという話があったけど,進んでるかなぁとおもったら,こっち方向に進化していたのか。個人的にはネットにアクセス出来ないこともあるので,パッケージとしてローカルにDLできるようにしてほしいけどなぁ。

さて,最後。荘島先生の「Asymmetric von Mires Scaling」は,オーディエンスの頭の中に新しいインスピレーションをまき散らすような話だった!
方向統計学,つまりどっちの方向にどの程度影響するかということを,2つのパラメタで表von Mires分布をMDSにもちこみ,非対称情報をそこに描き出そうというもの。モデルの結果は,「両思いは近くにプロット」,「片思いは思っている対象の方向を“向く”」というかたちで表現される。これはとにかく,見た目にわかりやすいアウトプットだ。千野のHFMや,Okada&Imaizumiの(楕)円モデルより,見やすさという意味で勝ちだねぇ。
ともかく,方向統計学という単語を初めて聞いたし,方向性を確率分布で表すという発想がなかったので,かなり頭の中で火花が散りました。

ちょうど今やっているモデルが,非対称ではないのだけど,複数の次元情報をひとつの図にプロットするモデルを考えていて,そこに「向き」を設定しようとしていたところだ。次元情報のプロットには地理統計学を使うつもりで,方向は非常にプリミティブにどっち向いてるか,というアイコンを置く,というイメージで考えていたので,そこも含んだ数理モデルが作れるかと思うともぅ,興奮するね。
トフラーの風モデルなんかとの整合性が気になったのと,Rでできるかどうか,というところがポイントだと思います。
荘島先生はGAでシミュレーション的に結果を出していた。数理的に出さなくてもいいんだと思うと,それが苦手な人間としては勇気づけられますね。もっとも,関数をGAで解くという技も簡単にできるようにならないと広まらないけど。Rになんかパッケージでもないかな?

これからは地理と方向,つまり空間統計学が来るな,という思いはますます強くなった。統計モデルがいろいろウェットになっていく感じがして,嬉しい限り。

しかしまぁ,自分の専門にもう少し没頭しないとだめだなぁ。最近,エフォートをあちこちにばらまいているようで,反省というか,もうちょっとうまいやり方を探さないとダメだな,と強く思うわけです(後悔はしていない)。

追伸)顕在変数的・代数的モデルならイメージしやすいけど,確率変数モデルになると理解に時間がかかる。これはBASICで培った頭はObject Oriented Programmingに向いてないことと相同的であると思う。

午後は総会,特別セッション,大会企画シンポ。とくに大会企画シンポは,大震災にあたって,行動計量学はなにができるか,というもので,報道のジャンルに注目して,メディア側二人,心理側二人を呼んでのセッション。いろいろ勉強になりました。

夜は懇親会。おかげで,いろいろな人に話しかけ,話しかけられて幸せでした。
更にその後の非対称懇親会(非対称セッション関係者の懇親会)では,狭い世間ながら新しい人のアイディアを聞いたりして,とても勉強になりました。隣の部屋ではA先生がベロンベロンになっていて,途中で混ぜ合わさったのもまた楽しかったな。

明日で学会も終了,その足で東京です。